「終活」2021年夏号

 最近,「終活」が流行っていますね。人生の総仕上げに向かって,自分らしい生活を送っていくためには,どんな準備が必要なのでしょう。

1 今の自分を見つめよう。

 あなたは今,どこで,どんな生活をしていますか?
 住居は,持ち家でしょうか,賃貸でしょうか。持ち家であれば,住宅ローンはどうなっていますか。同居家族はいますか,おひとり様ですか,働いていますか,年金は? などなど。

 自分の健康状態,家族や親族との交流状況,資産状況など,自分の現状をよく把握してみましょう。
 そして,今後,自分がどういう暮らしをしていきたいのかも考えましょう。
 「終活」というと,最初に,葬儀や遺言のことを考える人も多いようです。それはそれで,大事なことですが,自分がいかに生きていくか,が最重要です。
 自宅で暮らしていきたい人,いずれは老人ホームでのんびり暮らしたい人,田舎暮らしを希望する人など,様々な希望があると思います。

 また,後日,あらためて考えたら,変わることもあるでしょう。何度でも,その時々で,自分の人生を振り返り,今後のことを考えてみる,そしてその暮らしのためには,どんな準備が必要かを考えてみましょう。

2 医療・介護について

 多くの人は,健康に生きてそのまま人生を閉じたいと希望しています。いわゆる「ピンピンコロリ」が理想です。
 しかし,なかなか,そううまくはいきません。人生の最終期には,医療や介護のお世話になる人が多数です。
 急に倒れて入院したり,大きな病気にかかったりということは誰にでもあり得ます。そんな時に,どこで,どんな介護・医療を受けたいのかも,考えておきしょう。

 現状では,高齢になると,入院や施設入所の際に,延命治療を受けるかどうかなどについて意思確認をされる場合も多くなっています。また,その時には,自分の意思をうまく表現できなくなっていることもあるかもしれません。
 それに備えて,自分の意思,意向,希望を,書いて文書を残しておく,信頼できる人に話しておくなどして,準備しておくことは必要になっています。
 ただ,医療や介護は,制度の変更も頻繁にあります。技術やサービス体制の進歩もあります。少し前までは,「自宅での生活は無理,施設入所あるいは入院が必要」と考えられていた人が,福祉サービスや訪問診療・訪問看護を受けることで,自宅で暮らしているケースも,たくさんあるようになってきました。
 ですから,今の情報を得ること,相談できる人を持つことが一番大事だとも言えます。

3 「死後事務委任契約」の活用

 死後事務委任契約というのを聞いたことがありますか?
 自分の死後の遺品処分,葬儀や納骨,墓じまい,また,死後に残った様々な費用の支払い(介護サービス,施設費,医療費など)を,予め依頼しておく契約です。
 従来は,相続人となる親族が行ってきた事柄ですが,頼りになる親族がいない人,あるいは親族には頼りたくない人も増えています。
 さらに,自分のことは,死後も含めて自分で決めておきたい,と希望する人も増えています。
 葬儀についても,生前から契約をし,誰に知らせるのか,どんな葬儀とするのか,納骨の方法や場所など,自分で決め,信頼できる人に任せておくことができます。

4 遺言

 遺言によって,自分の財産の行方を決めることができます。

 また,相続人間での協議が不要となり,「争続」と言われるような親族間の争いを防ぐこともできます。遺言の内容も重要ですので,作成前に,よく吟味することが必要です。

 遺言には,公正証書により作成する公正証書遺言と自分の自筆で作成する自筆証書遺言があります。
 公正証書遺言は,公証役場で公証人が作成してくれるので,内容も明確になり,あとで争いになる可能性も低く安心です。
 自筆証書遺言は,自分だけで作成できるので簡単です。また,その効力は公正証書遺言と同じです。
 ただ,死後に家庭裁判所の検認という手続きが必要です。また,そもそも,死後に遺言の存在が明らかにならない恐れがありますから,貸金庫に入れたり,信頼できる人に預けたりするほうが安心です。

 法務局が自筆証書遺言を保管する制度も始まっています。この保管制度を使うと,検認手続きは不要です。また,相続発生後,相続人から遺言が保管されているか否かを問い合わせることもできます。 

 自分の希望に合わせ,いろいろな制度を賢く利用し,自分らしい生き方を実現できるようにしたいものです。