よくあるご相談

みなさまからよくいただくご質問を掲載しております。

成年後見(任意後見)について

Q1. 将来のことを考えると、認知症になったりしたらどうしたらいいのか心配です。何か備えておくことはできないのでしょうか?
A. 任意後見制度は、認知症などで、将来の判断能力の低下に備え、自分の後見人を自分で選んでおく制度です。
Q2. 後見人を依頼する人は、何か資格が必要ですか? また、信頼できる人が見つからない場合はどうしたらいいでしょうか?
A. 法律上、特に資格は要求されていません。自分が信頼できる人がいれば、その人に依頼してみるといいと思います。 なかなか信頼できる人がいない場合には、専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士など)団体で、紹介もしていますので、そちらも検討してみてください。
Q3. どういう手続きが必要なのでしょうか?
A. あなたと後見人になってくれる人との間で任意後見契約という契約を締結します。これは公正証書でしないといけないことになっていますので、公証役場で作成してください。
Q4. 後見人には、報酬を払わないといけないのですか?それはいくらになりますか?
A. 任意後見では、全て任意後見契約の定めによります。つまり、あなたと任意後見人になる人との間で、話し合って決めることとなります。
Q5. 任意後見契約を締結したら、すぐに後見人がいろいろとやってくれるのですか?
A. 任意後見契約は、締結後、あなたの判断能力が低下し、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されて初めて効力を発揮します。任意後見人は、任意後見監督人と家庭裁判所の監督に服するところに公的な安心感がある制度なのです。 もしもあなたが、一生、判断能力が低下しなければ、任意後見契約は効力を生じないままに終わってしまう可能性もあります。
Q6. 任意後見人は、何をしてくれるのですか?
A. それも任意後見契約で定めた内容となります。任意後見人は、あなたの代理人として、あなたに代わっていろいろな契約を締結するなどの法律行為をしてくれる人です。介護行為自体をしてくれる人ではありません。

成年後見(任意後見)について

Q1. 成年後見制度という言葉を最近よく聞きますが、どういう制度なのでしょうか?
A. 認知症などによって、判断能力に困難を抱える人の意思決定を助ける制度です。 日本は、超高齢社会(五人に一人が65歳以上)に突入し、認知症高齢者は数百万人と言われています。 知的障害や、精神障害の方も含め、判断能力に困難を抱える人を支援する仕組みが必要であるとして、平成12年4月の介護保険導入と同時に新しい成年後見制度ができました。 社会構造としても、核家族化が進み、独り暮らし、高齢者夫婦のみの世帯も増えていますので、家族の中で、すべての解決していくことは不可能です。社会全体で支援することが必要と考えられたのです。
Q2. 後見人が選任されるみたいですが、どういうことをしてくれるのでしょうか?
A. 後見人は、本人に代わって(代理人として)契約をしたり、銀行からお金をおろしてきたりして、本人の生活を支えます。本人が不利な取引をしたりした場合には、その取引を取り消して本人を守ります。 その結果は家庭裁判所に報告し、その監督に服しているので安心です。
Q3. 補助人というのもあると聞いたけど、どういう人なのでしょうか?
A. 法定後見制度は、後見、保佐、補助の3つの類型があります。 本人の判断能力が、欠けている人が後見、著しく不十分な場合が保佐、不十分だと補助となります。 ですから、補助と言うのは、判断能力の低下の程度は、軽い人が対象です。 補助人は、代理権あるいは同意権・取消権を設定できます。後見人は、民法によって、包括的に代理権と同意権・取消権を持っています。 後見人の権限は絶大なのです。 対して補助人の代理権も同意権・取消権も、全て申し立てる際に本人の同意を得て設定することが必要です。必要な権限だけを、本人の意思も尊重して、補助人に設定しようという趣旨です。
Q4. 申し立ては、どこにどういう風に行うのでしょうか?
A. 本人の住所地を管轄する家庭裁判所に、後見等開始の審判を申し立てます。 住所地は、住民票を基準に考えられています。今は、住民票のあるところではなく、別の施設に入所している、という場合でも、住民票の住所を基準に考えるのが基本です。
Q5. 申立は誰が行うのでしょうか?
A. 4親等内の親族には申立権があります。保佐、補助であれば、本人も申立できます。必要性があれば、市区町村長も申し立てることができます。
Q6. 後見・保佐・補助の類型は誰が決めるのでしょうか?
A. 最終的には裁判官が審判を行う際に決定しますが、まずは医師の診断書をとり、医師の判断に沿って、準備をして申し立てるのが実際です。
Q7. 他にはどんな書類が必要なのでしょうか?
A. 本人の戸籍や住民票、また現在は後見制度を利用していない(後見登記がない)という証明書、財産関係の書類などが必要です。 申立をする家庭裁判所によっても少しずつ違うので、裁判所に問い合わせたり、webページで確認したりしたほうがいいと思います。
Q8. 書類を全部集められそうにないのですが、どうすればよいのでしょうか?
A. 申立手続を、弁護士等の専門家に依頼することもできます。その際の手数料(報酬)は、普通の事案であれば、15万から20万円程度だと思われます。
Q9. 私が、後見人になりたい場合はどうしたらいいですか?
A. 後見人候補者として、申立書に記載して申し立てることができます。但し、事案の内容に応じて、最終的には裁判官の判断になりますので、必ず候補者が選任されるわけではありません。 財産が多額・複雑であったり、法的紛争がある、親族間に介護のやり方、あるいは財産関係をめぐって紛争がある、というような場合には、専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士などです)が選任されることもあります。 また、親族の後見人候補者がそのまま選任されるとしても、専門職の後見監督人が同時に選任される場合も多くなっています。
Q10. 後見人に任せれば、安心なのですね。
A. 後見人は、判断能力に困難を抱える本人の法定代理人として、本人のために、不適切な契約を取り消したり、本人に代わって介護サービスを検討して契約したり、施設費用を支払ったりすることなどができますが、後見人だけで、生活すべてを支えることはできません。本人のことを考える責任者が決まっただけであり、後見人を中心に、本人の生活をどうやって豊かにできるか、考えていくことが大事です。
Q11. 最近、後見人が本人のお金を横領したというニュースがありますが、大丈夫なのでしょうか?
A. あってはならないことですが、後見人の不祥事は大きな問題です。親族後見人も専門職後見人も、不祥事が大きな問題になっています。本人の預貯金等の財産は、本人のために使われるべきものであり、後見人が自己の利益を図ることはあってはならないことであり、横領等の犯罪を構成する違法行為です。 弁護士会では、後見人に選任されている弁護士に会として報告を求めたり、弁護士会の保険を契約するなど、不祥事対策を行っています。

相続について

Q1. 相続は大変という話をよく聞きますが、今から備えておいたほうがいいのでしょうか?
A. 相続は、死亡により開始するとされています。 人は誰でも、いつかは死を迎えますので、相続は、いつかは必ず発生する事態です。 しかしながら、それがいつなのかは、まったく分かりません。 時期によって、誰が相続人になるかも代わってきます。 遺産として誰かに残すよりも、自分の財産は自分のために使うことが、大事なことだと思います。 また、自分の財産の行く末を決めるためには遺言を作成するという方法もあります。
Q2. あまりつきあいのなかった叔母がなくなり、私も相続人の一人と言われました。相続人はどうやって決まるのでしょうか?
A. まず、亡くなった人(「被相続人」と言います)の配偶者(夫や妻です)は必ず相続人になります。 それと共に、以下の順番で相続人になります。①子ども、②親、③兄弟姉妹。 子どもや兄弟姉妹が相続人となる場合、被相続人より先に亡くなっていた人がいた場合に、その人に子ども(被相続人からみれば、孫、甥や姪ということになります)がいれば、その孫、甥、姪も相続人となります(代襲相続と言います)。 また、孫が先に亡くなっていれば、その子(玄孫)も代襲相続人になります。 甥姪の場合は、その子までは代襲相続人になりません。 相続人が直系の子どもの場合と、傍系の兄弟の場合は、少し違いがあるのです。
Q3. 亡くなった叔母は、どんな財産をもっているかわかりません。 自分で喫茶店を経営していたので、ひょっとしたら債務もあるかもしれません。 借金まで引き継がなくてもいけないのですか?
A. 相続は、財産だけでなく債務も含め、全てを引継ぐのが原則です(包括承継と言います)。ですので、借金も引き継ぐのが原則です。
Q4. 何が何でも引き継がないといけないのですか?
A. 借金が多いと分かっている場合など、放棄することもできます。放棄するには、相続開始が分かってから3か月以内に、亡くなった人の住所地を管轄する家庭裁判所に放棄の申述(しんじゅつ)という手続きを取る必要があります。
Q5. 実際に私はどのくらいの財産を相続できるのでしょうか?
A. 相続人全員による協議で決まります。協議でどのように決めてもいいのですが、民法では、法定相続分を定めています。協議がまとまらない場合には、最終的には家庭裁判所の調停を経て、審判が下されますが、その場合には、この法定相続分に従うことが多いです。
Q6. 法定相続分はどのようになっていますか?
A. 以下のとおりです
    1. 配偶者:子ども = 1:1
    1. 配偶者:親 = 2:1
    1. 配偶者:兄弟 = 3:1
例えば 【妻と子ども3人が相続人の場合】
    • 妻  2分の1
    • 子ども  2分の1
    • 子どもが3人いれば、2分の1を子ども3人で分けるので、子ども一人は6分の1ずつとなります。
【妻と夫の兄弟3人が相続人の場合】
    • 妻  4分の3
    • 夫の兄弟  4分の1を3人で分ける
    • 子どもが3人いれば、2分の1を子ども3人で分けるので、子ども一人は6分の1ずつとなります。それぞれが12分の1ずつとなります。
Q7. 話し合いがつかなければ、どうなりますか
A. 家庭裁判所で調停、審判をすることとなります。 調停は、家庭裁判所で行う法定相続人全員による話し合いです。それで話がつかないと審判になります。 審判は裁判官による判断ですが、法定相続分どおりとなる場合が多いと言えます。

遺言の豆知識

Q1. 遺言を作成しようと思っているのですが、遺言の書き方に決まりはありますか?
A. 遺言は、遺言をする人の最後の遺志を確認し、それに法的効果を与えて尊重するものです。 遺言のやり方、つまり遺言の書き方は、民法で厳格に定められています。 その要式を守らないと無効になってしまいます。 例えば、自筆証書遺言は、遺言書を全て自書する必要がありますし、日付や氏名、押印が必要です。
Q2. どんなことでも遺言をすることができるのでしょうか?
A. どんな事柄について遺言をすることができるのかは、民法で決まっています。 例えば、相続人関しては、相続分(各相続人の取り分)を指定したり、遺贈(遺産をある人や団体に贈与する)することなどができます。 また、お墓を守ってもらう人(祭祀承継者と言います)を指定することもできます。
Q3. 遺言は誰でもできるのでしょうか?
A. 遺言は、あなたの最後の遺志を尊重しようという制度です。 遺言をするのに他人の同意は必要ありません。あなたの意思だけで作成できます。 満15歳以上の一定の判断能力のある人は遺言ができます。 どの程度判断能力が必要かは、医師の意見も聞きながら、慎重に判断することとなります。
Q4. 遺言の種類にはどのようなものがありますか?
A. 遺言にはいろいろと種類がありますが、代表的なのは以下の二つです。
    • 自筆証書遺言 全文、日付け、氏名を全て自筆で書き、押印することが必要です。 タイプライターやパソコンで作成したものは無効です。文書をパソコンで作って、名前だけ手書きというものではだめです。 全文を自書することが必要です。 日付が無いもの、捺印が無いものも無効です。
    • 公正証書遺言 公証役場で、公証人に遺言の趣旨を伝え、作成する遺言です。 公証人が内容をよく検討して作成してくれるので、遺言の内容も明確になります。 また、検索システムがあるので、遺言者の死後、相続人は誰でも公正証書遺言の有無を調査することができます。
Q5. 遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言があると聞くのですが、両者のメリット・デメリットはなんですか?
A. 自筆証書遺言は、手軽に作成できるという利点はありますが、隠匿や破毀のおそれがあります。 また、遺言者の死後に家庭裁判所で検認(けんにん)という手続きが必要です。 相続人全員に通知をして、家庭裁判所で、遺言の状況を裁判官が調べます。ただし、この手続きで、遺言の有効・無効が確定するわけではありません。 遺言者の自筆かどうかということや、内容についても疑義が生じやすく、争いも生じやすいと一般的には言えます。 自筆証書遺言を作成するとしても、弁護士に相談し、内容をよく検討したほうが安心です。 これに対し、公正証書遺言は、公証人が遺言書の作成に関与しますので、遺言の内容が明確です。 また、公証人が公証役場で厳重に保管してくれるので、破棄・隠匿されるおそれがありませんし、遺言書の有無を調査することも容易です。 さらに、遺言者の死後に検認手続は不要です。
Q6. 遺言を作成しようか考え中ですが、どのような場合に遺言を作成したほうがよいでしょうか?
A. 遺言がなければ、法定相続人が相続します。そしてその結果は、法定相続分どおりとなる場合が多いと言えます。 そこから、以下の場合には、遺言を作成したほうがいいでしょう。
    • 相続人でない人に、遺産をあげたい場合 (例えば、お世話になった人、団体に寄付したい)
    • 相続分とは異なる割合にしたい場合 (例えば、子どものうちの一人が世話をしたので、その子に多く与えたい。また、家業のお店を継いでもらうので、店の建物はその子にあげたい)
    • 遺産をめぐる争いをなくしたい場合 (相続で争うことはして欲しくない)
Q7. 相続人の一人に遺産を全て相続させるという遺言を作成しようと思うのですが、何か注意することはあるでしょうか?
A. 遺言をすれば、必ずその通りになるとは限りません。遺留分という遺言をもってしても侵害できない権利があります。 配偶者と子どもは、法定相続分の2分の1が遺留分です。 ですので、例えば、配偶者がいるのに、遺産の全てをある団体に寄付するとすれば、配偶者の遺留分が侵害されたことになります。 遺留分を侵害された相続人は、その遺言に納得できなければ、遺留分減殺請求(いりゅうぶん げんさいせいきゅう)をすることができます。 法定相続分の半分は、保証された権利ということです。 この遺留分もことも加味して、遺言を作成することが重要です。