今回は、成年後見制度です。 日本は高齢化社会に突入すると言われて久しいですが、既に、65歳以上の人が総人口に占める割合はほぼ2割。つまり、国民の5人に1人が高齢者ということになります。 その中で、認知症等で、判断能力が低下した人が、利用するのが成年後見制度です。認知症の方は、100万人以上と言われており、現在でも成年後見制度の利用は増え続けています。
1 現代は契約社会です。契約には一 定の判断能力が必要です
例えば、銀行で、自分のお金を下ろすだけであっても、それは銀行との契約に基づく取引なのです。認知症で判断能力が低下していくと、預金を下ろすことも段々難しくなってきます。 金融機関は、本人確認を厳しくしていますので、夫名義の預金を妻が下ろす、といったことも、最近はチェックが厳しいですね。 介護保険を使ったホームヘルプなどのサービスも、事業者との契約です。ですから、契約当事者としての判断能力が求められ、それが一定以上低下すると、その人だけでは、有効な法律行為ができなくなっていくのです。
2 本人の能力を補い、助けて行くのが成年後見制度です
本人の判断能力の低下を補うため、家庭裁判所に申立をして、後見人等が選任されます。後見人等は家庭裁判所の監督を受けながら、本人に代わって財産行為等を行います。不動産の売却や、施設入所契約もすることができます。
本人の気持ちに寄り添い、自己決定権を尊重し、本人の身上に配慮する義務があります。
3 成年後見人等には、
親族がなる場合と弁護士などの第三者がなる場合があります
本人の身近な親族が後見人等になる場合が多く、全体の7割くらいです。しかし、財産がたくさんあったり、親族間に介護の方法や財産の管理の仕方などについて争いがあったりすると、第三者に任せたほうがよいと考えられます。 また、最近は一人暮らしの方も多く、頼りになる親族がいない、あるいは、親族には頼りたくない、という方も増えています。こうした場合には、第三者が後見人等になります。第三者とは、弁護士、司法書士、社会福祉士などです。
4 一度、後見人が選任されると勝手にやめることはできません
後見人等は家庭裁判所が選任します。
「父の遺産分割の協議のために、母に後見人をつけたが、もう終わって問題も無くなったから、母の後見人はもう要らない」と言っても、そうはいきません。本人の判断能力が復したわけではないので、後見開始前の状態に戻すことはできません。
但し、第三者後見人が選任されているのを、親族後見人に変更したりすることは可能な場合があります。
5 予め、後見人になる人を自分で選んで、
何をしてもらうかを決めておく任意後見制度もあります
自ら、自分の判断能力の低下に備え、将来の後見人を自分で選び、どういうことをしてもらうかも決めて、依頼しておく制度もあります。任意後見制度といい、公正証書を作成しなければなりません。自分で自分の老後に備えるのですから、自己決定権の尊重の趣旨に最も適うものとも言えます。
6 成年後見制度は、その人らしい生き方を支える制度です
例え判断能力が無くなっても、その人が望んだ生き方ができるように周りの人がサポートしていくことが、重要です。いくつになっても、また、判断能力が低下しても、自分らしく、生き生きと生きていきたいというのは誰もが願うことだと思います。
そのための制度として、上手に活用してください。